四月 親衛隊は推しに選ばれるまでは想いを伝えてはいけないルール

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 寮の部屋に戻り、吉良はすぐさま自分のベットに倒れ込んだ。何かをする気力など湧いてこない。ただ横になってぼんやりと部屋を眺めている。  この部屋は入って中央にロータイプのシェルフがあり、それによって部屋が二つにエリア分けされている。ドアから見て右側が吉良、左側が楯山の使用するエリアだ。それぞれあるのはシングルベッドと、勉強机。収納は小さなクローゼットと中央に置かれたシェルフ程度。  学生寮なのだから不便で狭いと思うのだろうが、吉良はこの部屋が大好きだった。なぜならいつも隣には楯山がいたからだ。  これからも卒業までは楯山と一緒だ。でもこれからはノロケ話や恋愛相談にも乗ってやらなければならなくなるのだろうか。 「吉良! いたいた!」  勢いよく部屋のドアを開け、部屋に入ってくるなり楯山が嬉々として話しかけてきた。なんとなくだるいが、このままふて寝しているのも「どうした」と楯山に突っ込まれそうなので無理して起きて「おー、楯山じゃん」と平静を装う。 「吉良、お前の好きな肉まんと、コンビニチキン買ってきたから一緒に食おうぜ。珍しく俺の奢りってことで」  笑顔の楯山の顔を見ているだけで辛い。 「お前の奢りなんて気持ち悪りぃな。なんかいいことでもあったのか?」  知ってて聞いてやる。きっと楯山は話したいだろうから。 「え? 特に何も……ただ、なんとなく?」  惚けた顔をしている楯山を見て、ああ。と吉良の中で合点がいく。  ——楯山は川上との交際は隠したいんだな。  学内カップルの噂なんてあっという間に広がってしまう。そのため同室の吉良にすら隠し通すつもりなのだろう。  確かに川上と付き合ってるなんてなったら、学校中から嫉妬の嵐。川上親衛隊に恨まれ、学校生活に支障が出るかもしれない。そもそも楯山にも親衛隊がいるのだから、楯山に恋人が出来たなんて知れたら大ごとになりそうだ。
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