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「武田先輩。お願いですから消えてください」
「嫌だ」
「先輩、はっきり言って邪魔です!」
「上杉。お前、誰に向かってそんなクチきいてんだよ!」
はぁ、もうさっさと話し合いを終わらせてくれよと吉良は思うが、上杉も武田も両者どっちも譲らない。
「吉良とふたりきりとか許させるわけねぇだろ!」
「先輩こそ! 俺が見てるの知ってて、吉良先輩に手ェ出しましたよね?!」
「は? なんもしてねぇし」
「ふざけるな。よくも人前で吉良先輩に抱きつくようなことをして……っ!」
上杉は見ていたのか。でもあれは抱きついたんじゃない。武田が吉良の背中のゴミをとっただけのことだ。
でも、吉良も抱きつかれるのではないかと勘違いしたくらいだから、遠目で見ていた上杉にはそう見えても不思議ではない。
「武田。お前先に寮に帰ってろ。俺は上杉と少し話をしてから帰るから」
「えっ、吉良っ?!」
武田はとても不安そうな顔をする。
「悪い。また明日、学校でな」
「いやっ、俺、待ってるよ。吉良が話終わるまで待ってるから……」
そんなの悪いだろと思うのに、武田は「待たせてくれ」と譲らない。
まったく、寂しがり屋にもほどがあるよな。
「吉良先輩っ! ありがとうございますっ! 行きましょう!!」
一方で上杉は嬉々として吉良の背中を押して、空いていた部室のミーティングルームの中へと誘った。
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