四月 親衛隊は推しに選ばれるまでは想いを伝えてはいけないルール

1/20
584人が本棚に入れています
本棚に追加
/159ページ

四月 親衛隊は推しに選ばれるまでは想いを伝えてはいけないルール

 やっぱ住む世界が違うんだよな……。  高校三年生になった吉良(きら)は三階の教室の窓から階下を眺めながらそう思った。  4月。桜の花びらが風に舞い、そっと吉良の頬を撫でていく。  桜の木の下。今、まさに目の前でカップルが誕生しようとしているようだ。  状況から察するに、告白しているのは川上(かわかみ)実家はかなりの資産家、嘘みたいに完璧なスタイルと超絶整った顔をした美男子で、高校生モデルとして有名だ。事務所に言われて始めたらしいSNSではかなりのインフルエンサー。本人はそんな気はないようだが、川上の着る服、行く店、全部流行る。そして男女問わずにものすごくモテる。  告白されているのは楯山(たてやま)だ。楯山の家も川上と負けず劣らずの名家で、代々優秀な一族のようだが、楯山も例外ではない。成績は常に上位。運動神経抜群、背が高いのでバスケ部でSG(シューティングガード)として活躍し、主将を務めている。  全寮制のこの学校はそもそも金持ちエリートが集まる傾向にある。学費も寮費も他の私立高校より群を抜いて高いからだ。  日本の高校卒業資格だけでなくカナダの高校の卒業資格まで取れる。理系文系共に洗練されたカリキュラム。世界を見据え、授業の半分はオールイングリッシュ。ディベートや経営、大学並みの科学を学べる環境まで整っている。卒業生は皆、国内外問わずトップクラスの大学に進学し、将来は起業したり、士業や医者などエリート街道まっしぐらだ。  そんな高校に平凡な家庭出身の吉良が入学できたのは奇跡だ。吉良は母親がダメ元で応募したこの学校の「生まれながらの教育格差を無くそうプロジェクト」に見事当選し、学費寮費ともに一切負担なし、奨学金で通っている。  つまりは周りは皆選りすぐりの人間ばかりで、吉良だけが平凡なのだ。
/159ページ

最初のコメントを投稿しよう!