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彼女が帰ってくる四日間、俺は彼女と時を共にする。彼女はその間俺の家に泊まって、あの頃のように日々を過ごす。付き合っていた頃はよくどちらかの家に泊まっていた。彼女も俺も一人っ子で、親は仕事で家を空けることが多いから、その時は夜更かしを楽しんでいた気がする。付き合いをやめてからも彼女が毎年遊びに来るようになって今年で六回目の夏だが、彼女は相変わらずよく話してくれる。その多くが昔話で、友だちの多かった彼女はクラスメイトの話もよく思い出していた。俺は真逆で友だちがいなかったが、彼女が絡む記憶の片隅に映るクラスメイトの話は何となく思い出せる。
付き合っていたあの頃はよく彼女も俺に触れてくれた。手を繋いで、口付けをして、抱き合った。愛されるという感覚を知らなかった俺が人の温もりに触れた時、初めて感じた何とも言えぬ高揚感を今でも覚えている。
ずっとこのまま一緒にいたい。
彼女だけがいれば他には何もいらない。
きっとクサいと言われるようなことを本気で思っていた。それまで恋愛経験で苦しい思いばかりしてきた彼女を、俺こそ大事にしようと、そう思っていた。
だが、その関係も全て俺は壊してしまった。俺のせいで、彼女は幸せにはなれなかった。俺は彼女のこれまでの恋人同様、いや、それよりも屑な人間なのだ。
触れたくても触れられない。触れてはいけない。
俺が壊してしまったものを思いながら、話す彼女の横顔を見つめていた。
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