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「そう言えばあれから恋人は出来た?」
ミンミンと蝉が鳴き、ジリジリと日が肌を刺す中。お気に入りの真っ白な袖なしワンピースを着こなして、紫外線など気にもとめず爽快に歩きながら彼女は俺に聞いた。やっぱり俺の苦悩をわかっていない。彼女は何も知らないんだろう。
「いねぇよ。」
渦が巻く心を沈めながら答えると、彼女はふうんと鼻で答えた。
「お前こそ、俺の事なんかさっさと忘れろよな。」
小さく言ったその言葉は、確実に彼女に届いた。彼女が小さく、そうだねと答えたのを聞いた。
何故俺はそんなことしか言えないんだろうか。俺が言えたことではないのに。彼女は俺を忘れたくとも忘れられないだろう。きっと俺の事を恨んでるに違いないから。
「私今でも覚えてるんだよ?君が私に言ったこと。」
一瞬ドキッとする台詞に心臓がキュッと締まった。だが彼女が語り始めたのは懐かしの思い出話だった。
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