12 一人称を演じる

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 江島という人には、色々考えさせられた。卒業以来会ったことはないが、時々思い出す。大人になった今でも、聡明とはああいう人をいうのだろうと思う。  江島は、夏目に、開口一番何を言ったか。合宿参加の意義ではなくて、「来ないのは寂しい」と、自分の気持ちを言った。業務連絡に、見えない一人称と二人称を交えたのだ。  他者との距離感の取り方。そして自分の演じ方。全てにおいて私は稚拙で、江島に到底敵わない。  私なんかじゃなくて、江島が担任だったら、救われた子もいたのじゃないかと思うことさえある。
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