1人が本棚に入れています
本棚に追加
そもそも私は誰かに対して、こんな風に語ったことがあっただろうか。
そんな記憶はなかった。夏目にさえ、私は一人称で気持ちを語ったことはなかった。
多分、学園生活というものは、演じるべき項目が多すぎるのだ。だから誰からも要請されない「本心」を演じることは後回しにされる。
そのうち、自分が何者なのか、分からなくなってしまう。そう、私のように。
しのぶれど色に出にけり。私たちはそんな真心を理想とする。互いに、演技ではない何かが漏れ出すのをじっと待っている。自他共に信じるに足る真心を、縋るように待っている。
でも通常、演じられない本心は、ただ消えていく。世界は舞台で、人は役者。シェイクスピアの言う通り。演じられない部分は消えるだけ。
最初のコメントを投稿しよう!