2 同じ病

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 数日前の朝。夏目が教員室に久々に出てきた。と思ったら、いきなり校長に、部活のことを相談しだした。合宿が云々と聞こえた。とっくに禁止令がでているんだよ夏目。どうしてまず私に聞いてくれないの。片腹痛かったものの、どういう風の吹きまわしなのか興味があって聞き耳を立てる。  夏目は頭をかきながら「部長がうるさくて……」なんて言っている。驚いた。生徒に何を言われようと、校長に談判しに行く夏目など見たことがなかった。  夏目が話し終え、やや沈黙があってから、校長は事務ロボットの表情で、感染症が蔓延しており、合宿は不可と返した。  あっさり玉砕した夏目は、レターボックスにたまっていたプリントを持って自分のお城に戻っていった。  久々に出てきたんだから「元気か」の一言くらいあってもよさそうなものだが、私のことなど、全く眼中にないらしかった。そこは相変わらずだ。にくい猫背とボサボサ頭だった。
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