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ーー
たくさん泣いて、泣いて、泣いて……。
ようやく落ち着いたころ、リリアンは顔を上げた。
服装は、クリーム色のワンピースと、花飾りのついた靴だった。どちらもリリアンのお気に入りだ。きっと、眠っている間に着替えさせてくれたのだろう。
眠ってから森の中まで目を覚まさなかったことを考えると、薬を盛られていたと考えるのが自然だった。夕食か、寝る前に飲んだ水か。
リリアンは立ち上がって辺りを見渡す。
道と言える道はないものの、木々の間に通れそうな場所はあった。
どこから来たのか分からない。どこへ行けばいいのかも分からない。
このまま、ここで大人しくしているのがいいだろうか。
空を見上げる。
生い茂る葉っぱでほとんど遮られているが、隙間から見える空は暗い。時間は分からないものの、夜だということは分かった。
「ホ―――――」
「ヒッ!」
森の中で鳥の鳴き声が響き、リリアンの体は強張った。
(……ずっと、ここにいても仕方ないよね)
リリアンは適当に方向を決めて、深い森の中を歩き始めた。
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