森の奥の屋敷

3/9
前へ
/9ページ
次へ
時々、飛び出していた枝で足を切った。 怯えながら、それでもゆっくり森を歩いて行く。 行く当てなんてないけれど、進むことは止めなかった。 どれだけ歩いたのか分からない。 もう何時間も歩いた気がするが、空はずっと真っ暗だ。まだ数分、数十分しか経っていないのかもしれない。 倒れた幹を乗り越えるために、太い幹をよじ登った。 ジャンプして下りようとしたとき、遠くに明かりが見えた気がした。 顔を上げると、遠くに小さく明かりが見えた。等間隔に並んだ明かりが、家の明かりだと気がついた。 (あそこに行ってみよう) 深い森の中に家があるなんて知らなかった。一体、誰の家だろう。村があるのだろうか。 リリアンは好奇心に釣られて、明かりの方向を目指した。ときどき木に登り、方角を確かめながら進む。 手足は切り傷だらけだったが、幸いどの傷も深くはない。零れそうになる涙を拭いながら、足を動かし続けた。
/9ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加