森の奥の屋敷

4/9
前へ
/9ページ
次へ
目指していた明かりの正体は、やはり家だった。 集落の明かりではなく、すべて1つの屋敷から出る明かりだった。 大きな門は開いていて、見張りはいない。 門から屋敷まで少し距離があったが、そちらから楽し気な音楽が聞こえてきた。 リリアンはキョロキョロと辺りを見回しながら、敷地内に足を踏み入れた。 石畳(いしだたみ)を歩き、門と屋敷の間ほどにある噴水(ふんすい)を見上げ、さらに続く石畳を進む。 屋敷の前に着くと、見張りが2人立っていた。ガタイのいい男の人。彼らは夏だと言うのに、スーツをきっちり着ている。その顔には目元を隠す仮面をしていた。 リリアンは暑そうな服だなと思ってから、あれ、と首を傾げた。 (そう言えば、暑くない) あれだけ歩いてきたというのに、全く汗をかいていなかった。むしろ少し寒いくらいだ。夜だし、森の中だからかな、とあまり深くは考えなかった。 というより、考えられなくなった。 見張りたちは、じろりとリリアンを見下ろす。仮面のせいで分かりづらいが、顔がリリアンの方を向いた。 見張りたちの視線に、リリアンは頭が真っ白になった。 「あ、あの……」 体が強ばって、キュッとワンピースを握る。リリアンが言葉に詰まっていると、左側の見張りが口を開いた。 「いらっしゃいませ、お客様」 その声は無機質で、感情が読めない。 「え?」 何のことか分からず、首を傾げて聞き返す。 続けて右側の見張りが口を開いた。 「もうパーティーは始まっておりますよ」 左側の人と同じ、感情の読めない声だった。
/9ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加