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目指していた明かりの正体は、やはり家だった。
集落の明かりではなく、すべて1つの屋敷から出る明かりだった。
大きな門は開いていて、見張りはいない。
門から屋敷まで少し距離があったが、そちらから楽し気な音楽が聞こえてきた。
リリアンはキョロキョロと辺りを見回しながら、敷地内に足を踏み入れた。
石畳を歩き、門と屋敷の間ほどにある噴水を見上げ、さらに続く石畳を進む。
屋敷の前に着くと、見張りが2人立っていた。ガタイのいい男の人。彼らは夏だと言うのに、スーツをきっちり着ている。その顔には目元を隠す仮面をしていた。
リリアンは暑そうな服だなと思ってから、あれ、と首を傾げた。
(そう言えば、暑くない)
あれだけ歩いてきたというのに、全く汗をかいていなかった。むしろ少し寒いくらいだ。夜だし、森の中だからかな、とあまり深くは考えなかった。
というより、考えられなくなった。
見張りたちは、じろりとリリアンを見下ろす。仮面のせいで分かりづらいが、顔がリリアンの方を向いた。
見張りたちの視線に、リリアンは頭が真っ白になった。
「あ、あの……」
体が強ばって、キュッとワンピースを握る。リリアンが言葉に詰まっていると、左側の見張りが口を開いた。
「いらっしゃいませ、お客様」
その声は無機質で、感情が読めない。
「え?」
何のことか分からず、首を傾げて聞き返す。
続けて右側の見張りが口を開いた。
「もうパーティーは始まっておりますよ」
左側の人と同じ、感情の読めない声だった。
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