森の奥の屋敷

5/9
前へ
/9ページ
次へ
一体何のことだろう。 リリアンの頭の中は疑問でいっぱいだった。 とりあえず、この屋敷ではパーティーを開かれている、ということは理解した。 「でも、あの、わたし、パーティーに招待なんてされてません」 リリアンがためらいがちに言う。 勝手に敷地内に入り込んだことを怒られてしまう、と体が強張(こわば)る。ワンピースを両手で強く(にぎ)りしめた。 「「いいえ、あなたは招待されていますよ、リリアン様」」 2人は声を揃えて答えた。 その口元は、三日月形に笑みを浮かべている。リリアンは作られたその笑顔に寒気がした。優しさより、怖さを感じた。 「どうぞ、お通りください」 「どうぞ、お楽しみください」 左側、右側の順番で歓迎(かんげい)の言葉を()べる。同じ動きで、後ろの重たそうな両開きの扉を開けた。 廊下の壁には、等間隔(とうかんかく)にロウソクの明かりが灯されている。 見張りに目を向けると、もうリリアンを見てはいなかった。姿勢を正して、まっすぐ前を見ている。 唾液を飲んで、意を決して屋敷に足を踏み入れた。 数歩進んだところで、背後でバタンと音がした。リリアンは驚いて振り返る。扉が閉まったのだと気づき、もう後戻りできない、と直感的に分かった。
/9ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加