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リリアンはまた前を向いて、屋敷の廊下を歩き始めた。
一度だけ曲がり角があったが、ずっと一本道だった。
進んで行くほどに楽し気な音楽が大きくなっていく。
パーティー会場はすぐに分かった。大きな両開きの扉が開け放たれている。
扉の両サイドに、屋敷前に立っていた見張りと同じ格好の男たちが立っていた。
「ようこそお越しくださいました」
「どうぞ、パーティーをお楽しみくださいませ」
左側、右側の順番で歓迎の言葉を口にする。
その声に感情はない。作られた笑みもまた、屋敷前にいた見張りたちと同じだった。
リリアンは小さく頭を下げ、パーティー会場に入った。
「わぁ~!」
大広間に入ると同時に、リリアンは感嘆の声を上げる。
高い天井。そこから垂れさがる豪華絢爛なシャンデリア。カーテンや壁、柱の装飾も細かい。
ただ派手なだけではなく、上品さのある広間だった。
広間の前方は低い舞台になっている。その舞台上で弦楽団が数人、演奏をしていた。
壁際には豪華な料理がたくさん並んでいる。リリアンが見たことのない料理も、たくさんあった。
広間の真ん中で踊る者、壁際で食事を楽しむ者、それぞれだ。
けれど、ひとつだけ共通していることがあった。
誰も見張りがしていたような仮面をしていないし、服装も全然キレイじゃない。むしろボロボロの服を着た人がほとんどだ。それに、子どもが大半を占めている。
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