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リリアンはアグニスに勧められた料理を食べた。
初めて食べる柔らかいお肉。
初めて飲むたくさん具材の入ったスープ。
初めてかいだ甘い砂糖の匂い。
たらふく料理を食べた後は、アグニスと一緒に広間の真ん中で踊った。
「ステップが分からない」というと、「好きに踊ればいいんだよ」と笑った。アグニスは、見張りたちとは違って、とても温かい人だった。
「あ、また人が来た」
アグニスが、大広間の入り口に目をやった。
リリアンも同じ方を見ると、困惑した様子で広間に入って来る子どもがいた。リリアンより幼く見えるその子は、広間を見渡し、呆然と口を開けて立ち尽くした。
「みんな、あんな感じになるんだよね。僕も最初はそうだった」
アグニスはクスクスと笑い、リリアンを残して入り口のほうへ歩いて行った。
リリアンは喉の渇きを覚え、ダンスの輪から外れた。
料理を楽しみ、音楽に聞き惚れ、自由に踊る。
それを繰り返すうちに、リリアンはずっとここにいたいと、心の底から思った。
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