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森の奥の屋敷
今年の夏は乾期だった。元から貧しい村ではあったが、乾期により村中の作物は育たず、食糧難が悪化した。
今ある分を切り詰めて食べても、当然ひと夏を越すのには無理がある。
そのせいで、口減らしをする家が増えていた。
口減らし。要するに、今いる家族を減らそうというのだ。多くは子どもやお年寄りが手放されてしまう。
街に行かせて貴族の養子にしたり、施設に入れたり、森に捨てたり、手に掛けたり……。
6人兄妹の末っ子、リリアンは、口減らしに森に捨てられた1人だった。
夜は自分の部屋のベッドで、ぐっすり眠っていた。目を覚ますと木々が立ち並ぶ真っ暗な場所にいた。
明らかに自分の部屋ではない。
ここが立入禁止の森の中だと考え付くのに、そう時間はかからなかった。
リリアンは眠る前のことを思い出す。
寝巻に着替えて、家族みんなに「おやすみなさい」と言った。
お母さんにお父さん、お兄ちゃんやお姉ちゃんたちも、やけに丁寧に額に口づけをして、いつもより強くリリアンを抱きしめた。
(そっか……。みんな、最後だって分かってたんだね)
末っ子と言えど12歳。自分の身に起きたことを理解するのは、そう難しくなかった。とは言え、簡単に受け入れられるものでもない。
リリアンはその場でうずくまり、静かに涙を流した。
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