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一緒に遊んであげても、すぐものは投げるし叩いてくるし。終いには私の大事な「ウサギの頑張る」絵本をビリビリ破ってしまいました。
「もう知らん。なっちゃんなんか、いらん」
そういうと、なっちゃんは大声で泣き出しました。泣きたいのはこっちです。大事な絵本をビリビリにされて。私もちょっと涙が出て来ました。破れた絵本のページを頑張ってセロファンテープで貼っつけます。でもこの時は私もまだ保育園だったからうまくできなくて、綺麗になりません。悲しくて悲しくて、なっちゃんなんか、どっか行っちゃえばいいのにと思いました。
その日の夕方、なっちゃんは熱を出しました。お母さんが病院に連れて行って、急に心細くなりました。お父さんが早くに帰って来て、一緒にご飯の準備をしたのを覚えてます。父さんと二人、クリームシチューを作ります。作ると言っても私は人参の皮を皮剥き器(ピーラー)で剥くだけですが。
「お父さん」
「うん?」
「大丈夫かな? なっちゃん」
「大丈夫、大丈夫、美味しいシチュー作って待っとこ」
「……うん」
振り向くと、夕日に染められたリビングが何だかとっても寂しくて、なんかキッチンから、そしてお父さんの隣から離れたくなかったのを覚えています。まだ梅江ばあちゃんと、雪生おじいちゃんは近所に住んでいた時なので、この時はうちには私とお父さんだけしかいませんでした。その誰もいないリビングに何とも言えない違和感を覚えたのです。懐かしい様な、寂しい様な、どこかに連れて行かれそうな、そんな感じを受けたのです。
私はギュッとお父さんのポロシャツの裾を掴みました。
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