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学校の怪談を始めようと思ってちょっと頑張って待機してたけどこの展開は聞いてないです
「皆の衆、よく聞きなさい!」
どどん!と机を叩いてみんなに指示を出すのは、いわゆるトイレの花子さん。教卓の上に立って、教室に揃っているおばけたちに演説している真っ最中である。
「今年の夏こそ、学校に我らありってのを見せつけるわよ!学校の怪談ブームを再来させるのよ、さあさあさあ!」
「まあ、俺達存在忘れられてるもんなー」
一番前の机の上、鎌を背負ってため息をついているのはテケテケ氏である。彼って学校の怪談のオバケってジャンルでいいんだっけ?ってことはつっこんではいけない。なんとなく映画とかでそういうイメージになっているからもういいことにするのだ。
「もはや、都市伝説……きさらぎ駅とかくねくねさえ古いと言われる始末。俺らって既に化石扱いされてね?ってかんじじゃん」
「そんな悲しいこと言わないでくださいよテケテケさん!」
悲鳴を上げるのは、トイレの太郎さんだ。
「ただでさえ、僕も花子さんも“名前からしてダサい”とか言われてるんですよ!?ここらで一気に巻き返さないと、本格的に忘れられちゃうじゃないですか学校のお化け!!」
「もはや定番化しているものの殆どが忘却の彼方であるからして」
後ろの方で、立ったままずーっと本を読んでいるのは、二宮金次郎像である。
「私でさえ、最近設置されてない学校多いし。というか、私もせっかくこの学校で立ってるのに誰も気にかけてくれなくて、最近苔生えてきてるし」
「ナニソレ悲しい」
「そうよ、みんなわかってるじゃないの!だからこそ、今年の夏は巻き返しが必要なの!夏の夜、イコール、ホラー!怪談に肝試しっていうのは、今でも残ってる文化でしょ!?」
花子さん、必死で教卓をバンバンと叩いてアピールする。おかっぱ女子なんて今時いねーし、なんでトイレで遊びましょうなんだよー!と小学生に笑われているのを聞いてしまってめっちゃ落ち込んだとかではない。断じてない。自分でもなんでトイレで小学生と遊んでやらなくちゃいけないオバケなのかわかってないわ!とか思ってはいけない。
「夜に忘れ物を取りに来る生徒!こっそり怪談したがる生徒に、肝試しに侵入してくる生徒!そういう奴らを狙いうちにして、学校に我らありと示すの。木造校舎でなくなったって、ちゃんと学校の怪談ってのは成立するんだから!というわけで」
ずびし!と廊下を指さして言う。
メリーさんやら、人体模型やら、ベートーベンの絵画やらも一斉に廊下を見る。
「まずは、リハーサル!子供達が来た時に、どんな風にビビらせるのか、SAN値削ってやるのか!今から全員で練習するわよ、いいわね!?」
七月七日。七夕なんて自分達は知らない。夏の夜はオバケの夜だ、墓場で大運動会ならぬ大リハーサルをするのだ!全ては、学校の怪談ブームを呼び戻し、子供達に忘れられないようにするために!!
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