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突然仲間を殺された男達が、呆然と立ち尽くす。しかし。
「……こいつだ」
その内の一人が、いまだ恐怖にとらわれた震える声を発しながらも、ユヅカを指差した。
「このガキが『竜使』だ!」
「捕まえろ!」
口々に喚きながら、男達が踏み込んでくる。竜が吠えて、また一人が炎に包まれたが、残る者達がユヅカを地面に引き倒し、がつ、と強く頭を殴りつけた。
衝撃に世界がぐるぐる回って嘔吐きそうになるユヅカの首に、男の一人が何かを填め込む。首に圧迫感を感じた途端、竜が頼り無い声をあげ、まるで銀色の砂のようにさらさらと形を失い崩れていった。
「ったく、びびらせやがって」
男達が鬱陶しげに吐き捨て、縄を取り出しユヅカの両手足をきつく縛り上げる。手首足首を圧される痛みに、遠のきかけていた意識が戻ってくる。そのせいで、男達の会話が明瞭に耳に届いた。
「まさか幻の『タツノオトシゴ』を操る竜使が、こんなガキとはな。ヒューゴの奴、上手く隠し続けたもんだ」
ヒューゴ。それはユヅカが誰よりも大好きな兄の名だ。
「兄様を知っているの」
まだ揺れる視界に顔をしかめながら発したユヅカの問いに、男の一人がにやりと笑って髭面を近づけた。本能的な嫌悪を感じて、思わず顔をそむけてしまうが、強い力で顎を引かれて、再び男と向き合う形に戻される。
「何だ、奴に飼われてたくせに、奴の事を知らねえのか」
男が小馬鹿にするかのごとく肩を揺らす。自分達は、早くに両親を亡くして以降助け合って暮らしてきた、世界で二人きりの兄妹だ。飼われていた、とは一体どういう事か。だが、ユヅカの顔に浮かんだ疑問の色に、男が答える様子は無さそうだ。彼が指を鳴らした途端、残る二人がユヅカの髪の毛を引っ張って上半身を起き上がらせると、がっちりと身体を抱え込み、猿轡をかませた。
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