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噴水の縁石に腰を下ろした妹と、その傍らに立つ私。風の強い日ならば水飛沫が吹き付けてくるかもしれないが、今日は穏やかな天気なので大丈夫だろう。
私たち二人は駅前の広場で、待ち人が来るまでの時間をのんびりと過ごしていた。
「少し早く来過ぎちゃったかな」
「そんなことないわ。時間ぴったりよりは、余裕ある方がいいでしょう?」
妹の呟きに笑顔で返すと、彼女も同じ表情で頷く。
「うん、ここならば涼しいもんね」
軽く振り向いて、後ろの噴水に目を向ける。私はそんな妹を眺めていたので、二人とも通りを行き交う人々の方は見ておらず……。
「おーい!」
「冬美さん、待たせちゃったかな?」
背後からの声で、待ち合わせ相手の到着に気づかされた。
「あれ? 智樹くんと倫太郎さん、二人一緒に来たの?」
「違うよ、夏帆ちゃん。駅の改札のところで、ばったり会ってさ」
「どうやら同じ電車だったらしい」
倫太郎はこちらに顔を向けている。智樹くんの補足というより、私に話しかけているのだろう。
「あら、そうなの」
軽く相槌を打ってから、ワンテンポ遅れた返事も口にした。
「大丈夫、たいして待ってないわ。私たちも今来たばかり」
こうして今日も、私たちのダブルデート、つまり休日の恒例行事が始まるのだ。
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