1人が本棚に入れています
本棚に追加
自分に姉がいるって知ったのは、まだ幼い頃だった。
両親がどうして姉を手放したのか、詳しい話を聞く勇気はなかったけど、「自分には姉がいる」その事実は幼い俺の心にしっかりと根を張った。
俺の家庭環境は劣悪で、それに耐えられたのは「自分には姉がいる」という、うっすらとした光があったからだ。
姉ちゃんってどんな女の子だろ?
でも、どんな女の子でも……俺のこと知ったら、きっとすっごく可愛がってくれるはず!
俺だって、早く大きく強くなって姉ちゃんのこと守れるぐらいになって……いいや。その前に姉ちゃんを探さなくちゃ!
そう思ってたけれど、なんとか成人で俺は姉を探すことを恐れた。
もし、探し当てても拒絶されたら? もし、俺が重荷や邪魔にしかならなかったら? もし姉ちゃんが悪人だったら? もし、もし……もし。
でも、ある日その人は奇跡のように俺の前に現れ、呆然とする俺に俺とよく似た顔で微笑んで、言う。
「ずっと探してた……こんにちは、私の弟」
最初のコメントを投稿しよう!