本当に優しいのはだれ?

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そうして、それから7年経った。 私は高校2年生16歳になった。 お姉ちゃんとりーくんは23歳。 社会人になって、2年目だ。 せいくんは大学2年生。 この間誕生日が来て20歳になった。 みんな大人になって、私だけがまだ子供。 もうご飯だって1人で食べられるから、お互いの家を行き来することも少なくなった。 まぁ、年に数回、ふた家族でバーベキューに行ったり、ホームパーティーをしたりするけど。 で、今夜、なぜか、せいくんの成人祝いのパーティーをうちでするらしい。 明日提出の数学の課題、まだ終わってないんだけど。 ま、食べる物食べたら、1人で2階に行って宿題やろ。 そんなことを思いながら宿題をやっている間に夕方になり、りーくんたちがやって来た。 「こんばんは。お邪魔します」 りーくんちのおばさんの声が玄関から聞こえる。 けれど、もう子供の頃のように玄関に駆け出すわけじゃない。 私は、呼ばれるまで宿題を続けることにした。 だって、難しくて全然終わらないんだもん。 けれど、すぐに父の声がする。 「舞花(まいか)! みんな来たから下りておいで」 私は、渋々、シャーペンを置いて、部屋を出る。 1階のリビングに行くと、お母さんとおばさんが台所にいて、りーくんとお姉ちゃんが並んでソファーに座り、お父さんとせいくんがつまらなさそうにダイニングに座っている。 「せいくんは、薬学部だろ? 大学はどうだ?」 お父さんがありきたりの質問をする。 会話が続かないから、私を呼んだんだろうな。 なぜかくすくすと笑いが込み上げて来た。 「りーくん、せいくん、おばさん、こんばんは。あれ? おじさんは?」 そういえば、いつもお父さんと話してるおじさんが見当たらない。 「父さんは会社から呼び出されて、仕事なんだ。さっき連絡があったから、もうすぐ来ると思うけど」 リビングからりーくんが答える。 私は、父さんの隣がなんとなく嫌で、せいくんの隣に座った。 「舞花は彼氏とかいるの?」 せいくんが尋ねる。 大きなお世話よ。 内心そんなことを思いながら、 「いないけど」 と、ボソッと答える。 「ふーん」 せいくんは、そう呟いたきり、何も言わない。 何よ? 言いたいことがあるなら、はっきり言いなさいよ。 そう思いながらも、はっきり言われるのも嫌なので、私も何も言わない。 当然、お父さんも喋らないから、気まずい沈黙だけが流れる。
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