本当に優しいのはだれ?

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「せいくんは、彼女いるんだろ?」 最初に口を開いたのはお父さんだった。 そうよ。 人に聞く前に自分のことを言いなさいよ。 私はそんなことを思いながら、せいくんの方を見た。 「いませんよ」 せいくんは、ボソッと答える。 「へぇ、意外だな。背も高いし、頭もいいし、顔もかっこいいのに。せいくん、絶対もてるだろ」 うんうん。 せいくんは、りーくんと違ってたくさん意地悪もしたけど、ルックスはりーくんと同じくらいかっこいい。 身長が少し高い分、見た目だけなら、せいくんの方がかっこいいかもしれない。 「誰でもいいわけじゃないので。俺を好きな人と俺が好きな人は違うでしょ」 私は驚いて、せいくんを見つめる。 こんなこと言う人だっけ? 今まで、私をからかったり、いじめたり、全然いい印象はなかったから、なんだかせいくんが別人のように感じる。 「まぁ、確かにな。せいくんも大人になったなぁ」 お父さんは感慨深げに呟く。 それからしばらくして、りーくんたちのお父さんがやってきて、輪に加わった。 大人はダイニング、子供はリビングで乾杯をする。 私だけジュースで。 「まいちゃんの時もみんなでお祝いしましょうね」 おばさんが微笑んで提案する。 その頃、みんなどうしてるだろ? その頃27歳のお姉ちゃんは、もしかしたら、子供がいるかもしれない。 結婚相手はやっぱりりーくん? りーくんは私の初恋の人だけど、そんな小学生の頃の失恋をいつまでも引きずってるわけじゃない。 今はちゃんと妹として祝福できる。 せいくんは…… 24歳? 社会人2年目。 ちょうど今のお姉ちゃんたちと同じ歳だ。 あ、でも、薬学部って6年だっけ? じゃあ、6年生だ。 私はそんなことを思い巡らす。 そんな私を知ってか知らずか、りーくんが立ち上がった。
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