本当に優しいのはだれ?

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部屋に戻り、問題と格闘を始めたところで、コンコンッとドアをノックされた。 この家で、わざわざ私の部屋に入るのにノックする人なんていない。 「ん? だれ? どうぞ」 私は、立ち上がるのもめんどくさくて、座ったまま声をかける。 すると、ゆっくりとドアが開いて、せいくんが顔を覗かせた。 「舞花、大丈夫か?」 ん? 「何が?」 何を心配されてるのか分かんない。 「舞花、兄貴のこと、好きだったろ」 えっ? なんでせいくんが知ってるの!? 私は、なんて答えていいか分からなくて、固まってしまった。 「これが、30と37とか、50と57とかなら、7歳違っても大した違いじゃないのかもしれないけど、俺たちは子供の頃に出会っちまったからな。7歳差は大きいよ」 何が言いたいの? 私が黙っていると、せいくんは続ける。 「舞花は、あゆちゃんよりかわいいし、これからもっといいやつに出会えるよ」 これって…… 「ねぇ、せいくん、もしかして、慰めてくれようとしてる?」 あの、いじめっ子だったせいくんが? 信じられない。 「そもそも、なんでせいくんが、私がりーくんを好きだったって、知ってるのよ?」 私、誰にも言ってないのに。 「分かるだろ。あれだけずっと『りーくん、りーくん』ってくっついてたら。理太郎に抱っこって言うから、代わりに俺がしてやろうとしても、『りーくんがいいの!』って暴れるし。理太郎はあゆちゃんと遊びたいのに、舞花がいっつも邪魔してるから、俺が舞花と遊んでやろうと思うのに、舞花はいっつも『せいくんじゃヤダ! りーくん!」って俺を無視するし」 えっ、うそ!? 「だって、せいくん、いっつも意地悪……」 ……じゃなかったの? もしかして、意地悪してたのは、私の方!? 「お前、普通に考えてみろよ。小学6年生の男子が、幼稚園児に『遊ぼ』って言われて、嬉しいと思うか?」 それは…… 「とにかく、舞花はかわいいんだから、理太郎のことなんか、さっさと忘れろよ」 そう言うと、せいくんは、私の頭をくしゃくしゃと撫で回した。 「ちょっ、せいくん、髪! もう! ボサボサじゃない!」 私が怒ると、せいくんは笑いながら、 「悪い、悪い」 と髪を撫で付けてくれた。 「もう! っていうか、私だって、いつまでもりーくんのことを好きなわけじゃないのよ? 普通に考えてもみてよ。小学生の頃の失恋を高校生になるまで引きずる人なんている?」 それこそあり得ないわよ。 「あ、そっか」 せいくんは、照れ臭そうに目を逸らして窓の外を眺める。
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