本当に優しいのはだれ?

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「分かったら、さっさと下に行ったら? 私、明日までの宿題、全然終わらなくて時間ないの」 私は、シッシッと追い払うように手の甲をせいくんに向ける。 すると…… 「宿題?」 とせいくんが机を覗き込んできた。 「お、数学だ! 懐かしい〜」 せいくんは、問題を読み始める。 「……もしかして、せいくん、数学得意?」 私は、下からせいくんの顔を見上げて覗き込む。 すると、せいくんは、くくくっと笑う。 「もしかして、舞花、数学苦手? 教えてやろうか?」 せいくんは、部屋の隅のピアノの椅子を持って来て隣に座った。 「今、何番?」 「えっと、5番」 私が答えると、せいくんはとても丁寧に数学を教えてくれた。 そうして、2時間後には、せいくんのお陰で、永遠に終わらないんじゃないかと思ってた宿題が終わった。 「やったぁ! せいくん、ありがとう!」 私がお礼を言うと、せいくんは、嬉しそうに笑う。 「舞花、俺を家庭教師として、雇わない?」 えっ? そりゃあ、せいくんが教えてくれたら、数学も出来そうな気はするけど…… 「でも、お母さんに相談しないと。せいくんのバイト代、払ってくれるかどうか……」 家庭教師っていくらかかるんだろ? きっと塾より高いのよね? 私がそんなことを考えていると、せいくんは私の頭をくしゃりと撫でる。 「バイト代は……いらない。ただ、幼馴染みが毎週遊びに来たついでに一緒に数学をやると思えばいいんだよ」 でも、それじゃ、せいくんに申し訳ない。 「だってせいくんだって忙しいのに……」 私がそう言うと、せいくんは少し考えて、こう言った。 「じゃあ、代わりに舞花も俺のために時間を使ってくれればいいんだよ。それなら、お互い様だからいいだろ?」 何それ? 「いいけど、私、何にもできないよ?」 私、せいくんのために、何ができるんだろう? 考えるけれど、すぐには思いつかない。 「簡単だよ。彼女のふりしてくれればいいんだ」 は? 「どういうこと?」 ふりって何? 「俺、告白されて断るのって面倒なんだよ。だから、彼女がいるってことにしときたいんだ。だから、例えば、サークルでテニスに行くとか、バーベキューに行くとかって時に、彼女のふりしてついて来てほしいんだ。あと、1人じゃ行きにくいレストランとか、映画とか、一緒に行ってくれると助かる」 んー、なんか、よく分かんないけど…… 「ま、そんなことでいいなら、別にいいけど」 こうして、私たちのお互い様な助け合いの関係が始まった。 私が、この時のせいくんの本当の胸の内を聞かされるのは、せいくんのお陰で無事大学に受かったその日だった。 子供の頃からずっと仲良しだったりーくんとお姉ちゃん。 でもね、子供の頃に掛け違えたボタンを大人になってから直すのも、悪くないと思うの。 ね? せいくん? ─── Fin. ─── レビュー・感想 ページコメント 楽しみにしてます。 お気軽に一言呟いてくださいね。
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