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 外観のほぼ出来上がった石造りの立派な建物を、ファニーはじっと見た。 「でも、才能あるあなたが認めてくれるのはとても満たされる。一緒に音楽会を作れるの本当に楽しみ」 「がんがん作曲するぞ」 「わたしも頑張るわ。好きなことに打ち込めるのは今だけと、お父様が。たとえそうでも、幸せなことだわよね」  いつか来るその日を、怖れているのは姉自身。才能の限りを尽くしたいというのは僕以上だろう。  地理の先生が来るので自室へ下がろうとしたその時、ファニーは呟いた。 「あ、でも私結婚無理かもしれないわ」  まさか、引く手あまただろうに。 「どうしてそう思うの」 「だってあなたのような立派な弟がいたら理想は高くなって当然でしょ」  ずっと思っていた。姉があまりに立派で女性への理想は高くなるばかりだ、って。  ふたごは考えることまで同じだとか。髪を長くたらした僕と少女らしさ真っ只中の姉は、外見がそっくりだったことがある。「ふたごみたい」と言われ、気恥ずかしいような嬉しいような気持ちになったことを思い出した。  小首をかしげて僕の顔をのぞきこむ、ファニー。僕の大切な姉さん。                                Ende
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