デブリードマン

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 廊下でばったり会うと兄は幾度となく舌打ちをした。部屋の外でも私を拒んでいるように思った。 「ご飯できたって」  母からのそう伝言を頼まれて、兄の部屋の扉を何度か叩いたこともある。しかし一度も返事が返ってきたことはなかった。私が一階に下りたあとで、兄はゆっくりと階段を踏みしめるように降りてきた。私との会話を極力避けていたようだ。  そんなやりとりが何度か続いたあと、兄は私が呼ぶ前に夕食の卓につくようになっていた。  ノックする手間は省けたが、私の気分は晴れなかった。兄は私を避けている。でも私は、兄が嫌いじゃない。
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