デブリードマン

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 そんな兄が中学二年生になったあたりから、突然学校を休みがちになった。兄の中学は私立の名門進学校で、私も兄と同じ中学への進学を目指して受験勉強に励んでいた。 「テツくん? どうして学校にいかないの?」  母が毎朝、自分の部屋から出てこない兄に向けて扉をたたきながら言っていた。しかし兄からの返事はない。 「もう一週間も休んでいるじゃない!」  母の声は次第に大きくなった。私も心配だったが、声をかけることはやめた。あんなに勉強ができた兄が学校を「サボる」なんて。当時の私は少し軽蔑した。 『うるさい! だまってろ』  扉の奥から兄の声がした。私は母の肩に手をおくと、 「お母さん。もう放っておこうよ」 と言った。
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