夏の夜空は美しく

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俺はその辺にいるしがない社会人。 今日は夏祭りのようで、帰り道は浴衣や法被を着た者が多くいた。 この季節になると思い出す。あの頃の思い出を。 小学…何年生だったか。俺は夏祭りに友人と来ていた。 来たのはいいものの、友人とはぐれてしまった。その時代、小学生はスマホや携帯なんて持たせてもらえなかったため、探しようがなかった。 一人で泣きそうになっていると、あの頃の俺と同じくらいの子供が話しかけてきた。 「…迷子なの?」 赤色の浴衣を着て、狐のお面をかぶっていて、顔は隠れていた。不思議な雰囲気をした女の子だった。 「友達と、はぐれちゃって…」 「私も迷子なの。一緒に探さない?」 「うん…!」 それから、迷子なのも忘れて二人ではしゃぎまわったのを覚えている。 「あ!いた!」 漸く友人の背中を見つけた。 「よかったね。ほら、いっておいで」 女の子も迷子だと言っていたので俺は大丈夫なのかと心配したが 「私も、見つかったよ」 といったので俺は友人のところに走っていった。 ちょうど花火が上がりだした。そのときに思った。あの子の名前を聞いていない。 振り返っても、あの子は見えなかった。ただ、幻聴なのかなんなのか、ありがとうとあの子の声で囁かれた気がした。 花火の上がる空を見上げ、また来年もいるかな、なんて思ってその年から毎年夏祭りに参加しているのを覚えている。 彼女はいまどうしているだろうか。まだ夏祭りに参加しているだろうか。 そういえば最近は忙しくてずっと夏祭りに行っていなかった気がする。 今度いってみようかな。そんな気持ちであの頃の俺と一緒のようにはしゃぐ子供たちをみて帰路についた。
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