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ずっと思いつめたような顔をしていた兄が、大学でどう振る舞い、会話を切り抜けたのか知る由もないが、そのうち以前と同じような調子で家に帰ってくるようになった。
そして、予定通り、トモちゃんとニュージーランドに旅立った。
私は、自分のしたことが大して影響しなかったことにほっとして、また落胆もしていた。
結局、私ごときがどうしたって、人を深く傷つけることなどできないのだ。
明日、二人が帰ってくるという日、一限の授業の待ち時間にぼんやりとスマホを見ていたら、ネットニュースに、ニュージーランドで邦人二人の遺体があがったと速報が出て、眠気が一気に吹き飛び、タップした。
グレートバリア島の美しい星空の下で、水面に反射した星の輝きが辺り一帯に散らばる。
星の光を帯びた水が全身からしずくとなって流れ落ち、トモちゃんと兄の遺体が静かに引き上げられる。
そんな想像をして、なんて美しい最期なんだろう、と私はため息をついた。
※ルミナス……バラの品種
※黄色いバラの花言葉「友情、不誠実、嫉妬」
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