手紙に太陽を

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 私に弟という存在ができたのは、中一の夏のことだった。は、数年前から離れて暮らしているお母さんとの待ち合わせ場所に突如として現れ、無邪気に私の手を握ろうとヨタヨタと歩いていた。 「太陽って言うの。仲良くしてね、お姉ちゃん」  とびっきりの笑顔でそう言い放ったお母さんは、早々に私に太陽という名のこどもを預け、再婚相手である男の方へと身体を向けてクネクネしていた。そして付け足すように「あ、その子、一歳半だから」と教えてくれたけど、そんなことよりももっと知りたいことが山のようにあった。  けれど、知りたいことは何一つ知ることができないままに、私はこの輪の中で取り残されたまま、賑やかで微笑ましい家族の一員のふりを強いられることになった。 「お母さんと暮らすことになったよ」  前日の深夜二時、突然に告げられたおばあちゃんからのその一言。それが本当に本当に嬉しくて。その言葉を原動力にひとりでこんな所まで電車を乗り継いでやってきたというのに。  私はお母さんと暮らせるのがすごく楽しみで、一番のお気に入りの服だって選んで着てきたのに。今まで嫌々面倒を見ていてくれたおばあちゃんにも、つい「楽しみだ」なんて素直に言っちゃったりしたのに。  なのに私は今、何をしているのだろうか。この時間は、この空気は、一体どうしたらいいのだろう。 「まんまっ」  ほら、この子も貴方を呼んでいるのだから、さっさと戻ってきてほしい。この、人差し指をしっかりと掴んで離そうとしない小さないのちを何とかしてほしい。私は一体何をしたらいい?  教えて、お母さん。
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