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「今日も暑いな……」
照りつける日差しが僕の後ろを離れる事はなく、汗だくになりながら長い階段を登る。
左肩にスクールカバンをかけて、右手には花束を持ち、不意に吹く風は涼しく、風に吹かれた木々達は爽爽と音を鳴らして快く僕を歓迎してくれた。
階段を登りきると、まずは窓口に向かって、声をかけた。
「すみません、1つください」
そこであるものをお願いすると、受付の人はそれを1つ取って、それに火をつけてくれた。
「どうぞ」
「ありがとうございます」
それを受け取りお金を払うと、僕はその足で彼女の所に向かったのだ。
「遅くなってごめんね」
声をかけると彼女は眠っていて返事をしない。いつもの事だ。
窓口で買ったものを網の上に乗せたら、慣れた手付きで手桶に入った水を柄杓ですくい表面にかけると、ブラシで優しく擦りながら洗い、花屋で買ってきた花は花瓶に飾ろうとしたが、誰かが来たようで新しかったので、水だけ新しく入れ直し花束を2つに分けて、一緒に入れさせてもらった。
花瓶の中に入った淡い青紫の花はこちら向き、まるで彼女が僕に笑いかけているように思って、僕は微笑みそのまましゃがみ込んだ。
窓口で買った線香の煙が体全体を覆い、僕の頭を覆う。目を瞑り、手を合わせて、日々の出来事を彼女に話した後、最後に僕はあることを口にした。
「先に行ってるから。また、後でね」
彼女が眠る墓の前で別れの挨拶をした後、僕はそのままあるところに向かったのだ。
彼女との約束を果たすために。
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