5人が本棚に入れています
本棚に追加
/27ページ
全てのテストが終わった日、職員室にいる先生を呼び出して、なぜ彼女は学校を休んでいるのかを聞くと、先生はなぜか眉を下にさげては困った表情をする。
けれど、それも数秒の事で僕をじーっと見つめた先生は何かを決心したように閉ざした口を開いて僕にこう言うのだ。
「誰にも言わないでくれと、口止めされていたんだ」
「え?」
「だけど、もしお前が聞いてきたら、話してもいいと言われていてな」
その返答に僕は驚くが、先生は僕の反応を無視して自分の話を続けた。
「教師として、皆と平等がいいのだと思ってはいたが……」
そして、先生は最後に謎目いた言葉を僕に言うのだ。
「なぜ、お前にだけ話してもいいと言ったのかが、なんとなくわかったような気がする」
先生は言い終わると自分のデスクに一旦戻りメモ用紙に何かの文字を書くと、それを僕には渡した。
書かれていたのは、病院名と部屋番号だった。
「今日行ってみるといい。理由は自分で聞いてきなさい」
先生はそれだけ言うと、職員室に戻ってしまった。
「次は、海が丘総合病院前~」
先生に言われるがまま、学校を出たら急いでバスに乗って、メモに書かれている病院に向かった。
目的地のバス停に着くと、お金を払ってバスを降りる。すると、目の前には花屋があった。
彼女の為にお見舞の花束を買って行こう。
とっさに思いついた僕は、お店に入ると店員に小さい花束をお願いして作ってもらい、急で病院に向かった。
数分して病院に到着すると、そのまま彼女の病室には行かず、窓口に向かった。
「すみません」
受付の人に声をかけて彼女の面会の話をすると、僕に1枚の面会シートと1本のペンを渡した。
「ここの欄に記入してください」
言われた通りにその欄だけに記入して返却すると、面会と書かれた首かけ名札を渡されたのでそれを首にかけた僕は早歩きで彼女の病室へと歩き出した。
病室までの道はまるで迷路のようだった。総合病院だからか中は広く、道は入り組んでいて、道に迷っては案内板を見てを繰り返し、なんとかして彼女の病室にたどり着くことができた。
病室を前にして、壁に飾られている表札の部屋番号とメモを再度確認し、最後に名簿欄を見る。
そこには、日頃から学校で見ていた彼女の名前がそこには書いてあったのだ。
本当に彼女は入院しているんだ……
僕は今になって、彼女の入院が本当だったと改めて実感してしまった。
ここにたどり着くまでの間は物事を現実的にとらえられていなかった事もあってか、先生に渡された1枚のメモを頼りに向かっていたからか、目の前の病室に彼女がいる事をわかると、僕は現実に引き戻されると同時に、急に心臓の鼓動がどんどん早くなっていくのがわかった。
久しぶりに彼女と再会するとわかってしまったから、僕は緊張してしまったのだ。
この病室に彼女がいる……
病室に入るのを少しだけ躊躇してしまう自分もいるし、彼女に会いたい自分もいる。だけど、答えは1つしかない。
僕は生唾を飲み込んだ。
ココに来た理由を頭の中に言い聞かせながら、少しだけ重くなった足を床から離すと僕は、彼女がいる病室に1歩足を踏み入れた。
最初のコメントを投稿しよう!