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その日から僕は、学校が終わると彼女に会いに行くようになった。
会いに行くと彼女は嬉しそうにして僕を迎えてくれる事がとっても嬉しかった。
来る日も来る日も笑顔で迎えてくれる彼女は、僕が彼女を好きになった理由だから。
それから数日たった頃、明日は終業式。学生が待ち遠しかった夏休みに突入する。期末試験の成績も上々で、夏休みを返上して補修もない事から、僕の夏休みは初日から最高の日になる。今だってそうだ。
「花火大会?」
「うん!」
目の前の彼女は瞳をキラキラさせながら、花火大会のチラシを僕に渡した。記載された内容を読むと明日、病院の近くで花火大会があり、そこで毎年、この病院は患者の為に特別に屋上を開放して、花火観賞を特定の人限定で開催しているらしく申請すれば、家族友人も見れると書いてあった。
「一希君、明日一緒に見れる?」
「大丈夫だよ」
「本当! やったー」
満面の笑みを浮かべる彼女に自分の中に新たな感情が生まれる。
前までは彼女を見つめて想う事しかなかったのに、今では彼女が可愛くて、胸の辺りがくすぐったい。これが、恋人になった時の恋心なのだろうか。
「一希君」
「うん?」
不意に話しかけられて彼女を見ると、さっき見せられたチラシに指を差す。
「これ、お願いしていい?」
その文字を見て僕は返事をする。
「いいよ。何がいい?」
「えっとね……」
手招きされて顔を近づけると耳元でこそっと囁かされる。
彼女の息が耳にあたって、少しくすぐったい。
「いいよ、後は?」
他に何かあるか聞くと、今度は手招きせずにあることを言われた。
それを聞いた僕は少し考えて口を開いた。
「……わかった。母さんに聞いてみるよ」
そうゆうと、彼女はまた満面の笑みを見せて「楽しみにしてるね」と、僕の手を優しく握ったのだ。
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