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すると当たり前のようにいや当たり前だが
「知らんけど。えっ初対面やんね。」と返ってきた。
内心ため息を吐きつつ「俺は皇 黒羽だ。ここの生徒会長をしている。」と自己紹介をしてやった。
「それで?お前の名は。」尋ねると彼は「黒瀬 慎」と応えた。
俺はそいつの顔と名前を一致させて覚えるべく慎の顔をまじまじと見た。黒の長髪をオールバックにして、片耳に銀のピアスをつけた後は至って平凡な顔つきだ。どんな強面だと思ったら平凡ときた。拍子抜けしてさらによく見ようと顎をつか…もうとした。
だがやつは華麗にかわし、「なんなんすか。」と少しイラッとした声で尋ねてきたので、こちらも少々イラッとして「なんなんすかはこちらの科白だ。なぜこんなところで寝ている。しかもお前酒を飲んだだろう。どうやって買った。未成年だろう。」
俺の言葉を聞いているのかいないのか、奴は「はいはい。次は見えないところでやりますよ。」とふざけたセリフを残して立ち去ろうとする。
いや待て待てお前そっちは寮の方だ。もう一度今度は奴の首根っこを掴んで引き止める。「いや。お前一年だろう。クラスは?今からホームルームだ。」と言えば、「ああ。クラス…知らんす。」とあっさりと応えた。
まあ、そうだろう。入学式の後のクラス発表も聞いていないのだろうから。俺の予想だとこいつはFクラスだ。この学校にはS〜Fまでクラスがあり、Fクラスは素行不良の生徒の集まりだからだ。だが、一応俺は生徒会長だ。人を見かけで判断できない。ため息を吐き、首根っこを引っ掴んだままヅルヅルと奴を引きずりながら生徒会室に向けて歩き出した。「痛いっ痛いっ…」と騒ぐ奴は無視だ。
さて、生徒会室に着いた。奴をソファに放り投げ、俺は自分のPCを立ち上げる。事前にもらっていた生徒情報の一年の欄を開き、カ行をクリックして「黒瀬 慎」を探す。案外と上の方に名前を見つけ、思わず二度見した。なんと奴はSクラスだったのだ。一度PCから顔をあげ奴の方を見るとまだ「痛い…」情けない声をあげながら、首の辺りをさすっている。そんな奴に俺は「おい。クラスが分かったから行くぞ。」と声をかける。「ええ。一人でいけますよー。」とのたまう奴に俺は鼻を鳴らして「今まで自分のクラスも知らなかった奴がか?堂々サボる気だろう。」と言った。奴は言葉に詰まった。ほらな。図星だろう。俺はまた奴の首根っこを引っ掴んで、ヅルヅルと引きずって1ーSまで行った。
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