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食堂イベですよ。一匹狼くん
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生徒会業務の間に中庭へと赴けば、陽光の差すベンチに寝転ぶ、人を見つけた。漆黒の長髪を広げベンチの背の方に顔を向け、気持ちよさそうに、寝息を立てる。おそらく一年だ。確か今は授業中のはずだ。なぜと思うも寝ている彼をみるとどうでもよくなってくる。彼が寝てもまだ十分に余裕のあるそこに、俺は浅く腰かけた。ふと興味を持って、長い髪を触ってみて驚いた。とてつもなくサラサラだったからだ。一見硬そうに見える。量の多い髪を後ろで一つにまとめている。だが、実際触ってみると、スッと指が通るほどにサラサラだ。面白くなって、何度も梳いていると、そのうちどんな人なのか知りたくなった。髪を弄んでいても、一向に起きる気配のない彼を仰向かせる。すると、太陽の光が眩しかったのか、眉間に皺がより、少し呻いてゆうるりと瞼が上がる。少し瞬いたあと覗き込んでいた、俺の目とぱっちりと目が合う。途端に怪訝な表情になる。「おそよう。」と声をかけると「お、そよう?」と返ってきた。その顔がなんだか面白くて、笑ってしまう。すると、「なんなんすか。誰?」と問うてきたので「なんなんすかはこっちの科白ですよ。今は授業中でしょう。なぜ、ここで優雅に寝ているんですか。」と彼の質問に答えずに、説教じみた言葉を吐く。「昨日とおなじ…」などと呟いている彼を凝視していると、「さーせん。教室戻ります。というかそれをいうなら先輩も…」などと言いながら立ち上がるので、袖を引いて引き止める。「私は生徒会役員なので授業免除がつくんですよ。それより、君の名は?」と問えば、「ますそちらから名乗るのが礼儀とちゃうんですか。」と生意気にもそう返すので、「君の方が立場が下でしょう。」と少しの自尊心をもってして応える。「ああ。じゃあいいです。教室いくんで離してください。」と当然のように、立ち去ろうとするので、もう一度強く袖を引いた。にもかかわらずその生徒は、微塵もその場から動かず、顔だけもう一度こちらに向けてきた。「なんすか。」と声に出さずとも伝わってくる。「教室まで、送ります。クラスは?」と聞くとあからさまに嫌という顔をして「いいですよ。自分でいけます。」というバレバレの嘘をつく。いや、教室まで行けるというのは本当だろう。だが行くとは限らない。俺はため息をつき、袖を引っ張って一年の教室がある棟の3階に向かう。こんなとこでサボっているくらいだ。Fクラスの生徒だろう。と思い3階を目指したのだが、「あの、先輩。どこ行っきょんすか。」とどこの方言とも知れない言葉で問われる。「君のクラスですよ。Fでしょう?」と聞けば、「いや俺Sっす。」と返ってきて驚いた。このなりでこの態度でSクラスとは。だが、すぐに切り替えて、「失礼しました。では参りましょう。」と上がりかけた階段を下りて、2階フロアに戻る。1ーSと書かれた教室の前の扉を開けて、「失礼します。Sクラスのサボりを見つけたので、連れ戻してきました。」と言う。後ろで「サボりはひどくね。」とかなんとか言っていたが、無視だ。丁度現国の時間で担任の授業だった。「こいつに日本語教わるのかよ。」とかなんとか言っている。同意見だ。だが、サボっているお前が言えたことか、と思いながら、「皇先生あとはよろしくお願いしますね。」と言い、いまだに名も知らぬ彼を教室に放りこみ、踵を返す。その間生徒誰も何も発さないよく訓練されている。ここがSより下のクラスなら、俺…というか生徒会が来ただけでもう動物園なのに。
生徒会室に戻ると会長と会計、書紀が黙々と仕事をこなしていた。俺が入ってきたことに気づくと会長が顔をあげ、「遅かったな。梨木。」と声をかけてきた。「申し訳ありません。」と頭を下げると「いや、別に構わないが。」と言う返事が返ってきた。俺はふと思いたって「あの、会長。」と再び自分のPCに目線を戻した会長に声をかけた。すると目線だけを俺の方に向けて、なんだと問うてくる。「今年の一年生、顔と名前を把握してますか。」と問うと「ああ。」と返ってきたので、安心して「では1年Sクラスの…」とそこまで言った時、何かに気づいたような顔をする。「何か。」と尋ねれば、「もしや、黒髪長髪のオールバックの平凡に遭ったか。」と聞かれた。俺は驚いた。まさに、今送り届けた一年の特徴と一致したからだ。「ええ…」と頷けば、会長ははあっと大きなため息をついた。「知っているのですか。」と聞けば「ああ。」と返ってきた。「昨日、入学式をサボって酒を呑み、堂々と学校をサボろうとしたやつだ。」という。俺はさっきとは比にならないほど驚いた。「酒というのはあのアルコールですか。」と尋ねれば首肯が返ってきた。マジか。すげー白昼堂々か。俺でも夜に少し飲む程度なのに。「で、そいつがどうした。」と聞かれハッと思考から抜け出す。「ああ。その彼が先ほどまで、中庭のベンチで昼寝をしてサボっていたので、教室に連行したのですが…彼の名前は?」と俺が聞くと会長はまたもやはあっと大きなため息を吐き「黒瀬 慎だ。」と教えてくれた。黒瀬 慎。不思議なやつだったな。「あいつを見つけたら即刻連れ戻せ。」と会長が言って俺が頷いたことで、この話は終わった。
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