号外

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号外

君の絵をなぞる度に、 君の声を慈しむ度に、 世界の悲鳴が聴こえる。 君が僕の事を知っているのに、知らぬふりを続けている、その所為でまた一つ花弁が落ちた。 降り続く雨、燦燦と、窓の外、粛々と。 ゲリラ豪雨だ! 白魚のような指先、雨粒が集まって地に落ちている、密集して離れて、繰り返される、僕らに似ている、僕らの様だ、僕らみたいだ、 繰り返される、 僕らみたいだ。 ゲリラ豪雨は僕らの子供、不幸せな子供たち、地に落ちては転がっていく。転がっていることを彼らは知らない、転がされていることも彼らは知らない、君も知らない、何も知らない、何もかもどうでもいいんだ、君がどうなろうと僕には関係が無い、それでも。 ナイフに刺されたみたいに君が僕を見つめるから。 血に塗れたその手を僕に差し出すから。 ゲリラ豪雨だ! 僕が窓の外を指さすから、君は曖昧な笑み、何も見えないまま僕の指を手折る。風が吹いて君の指を手折る。何も見えないまま、僕ら手を繋ぐ。 ゲリラ豪雨だ! 花弁は僕らの指先によって落ち、セミの抜け殻は僕らの靴先によって潰される。それでもいい、僕らは一つ傘の下。くしゃりと音がして、足元、君の笑顔が転がっている。 因果応報!天変地異!天変地異! 騒ぐ奴らはみんな阿呆だ。 天変地異!天変地異! 君たちは噂話ばかりしている、花を咲かせて踊ったり躍らせたりしている。 お相手は泥の中、そのまま埋もれて、 酒に溺れて水の中、そのまま沈んで。 急転直下、 君の愛と同じ、 別れを切り出す、 電光石火、 君には勝てない、 世界の悲鳴を聴くまでもない。 叫び続けて、 叫び続けて、 叫び続けて、 喉を嗄らして? そんな君に水をあげたい。 ゲリラ豪雨だ!君のものだ! ゲリラ豪雨だ!僕のものだ! 雨を見つめて街に出よう、君の為に傘を差したい。
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