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驟雨
生きている。
どうにも、生の実感というものは口先から溢れるようでいて、あっという間に乾いてしまう。
夕やけの空、蒼と橙が混在している。ぼくはいつも、そらを見上げて、実感を得ていた。
夏の日差しは眩いだけで大切なものを隠してしまう、ような、気がしている。
ひらがなのまるみのようにいきていけていたら、よかったんだ、こんなに尖りたくなんて無かった。
ロックが好き。届かない場所にあるから。
祈りみたいだ。
バラードが好き。いつでも隣にあるから。
願いみたいだ。
ずっと願いなんて握りしめずに祈っていたいね。届かないところにあるものほど愛おしく想えるのは愚かか。何故なんだろうね。近くにあるものほど、熱を孕んで見つめることが出来ないのは。何故なんだろうね。
当たり前がこんなにも違うのはなぜ。
今ではちっとも思い出せない君の面影を他人に移し合わせてしまう、虚しさ。閉め出して、消えた筈なのにね、記憶なんてガラス瓶の中に移しちゃいたい、真ん丸な飴にして舐めちゃいたい。
甘い物は飽和材。
舌の上で転がしたら、色んなこと、許せるかもしれない。
夏が暑いこと、忘れられないこと、馬鹿々々しいこと、君たちがいないこと、生きていること。愚かな、こと。
甘い物は飽和材。
遥か昔のこと。
石畳の作品。石畳の残骸。白黒、真四角。
あれより美しいものを、パッサウでしか見たことがない。国が変われば、もっともっと。
美しいもの、見られるのだろう。美しいものに執着している。母国より、他国にばかり目を奪われてしまうのは、無いものを祈っているのと同じこと。
『あなたと出会った時点でぼくの人生は決まったようなものだよ。』
石畳を指でなぞる、粉々。
放射線状に散らばった。それを、世界と名付けた、ぼくは、もういない。写真を撮ることでしか逃げ道を見いだせなかった、
あのころの。
星の形に穴が開いた、ブリキ缶のキャンドルホルダー。夏の終わりに、スティックタイプの芳香剤を部屋から投げ捨てた。あなたの代わりはもう、要らない、あなただけで、いい。
星の形をなぞった、熱くて傷になりそうだ、水膨れもできるかも、指先。あのころの。
エレキギターを爪弾く指先、
頭上の黒色を見て思い出した、柄を包む、美しい手のひら。
美しいものに執着している。
夢なら、覚めないで。
あなたの優しさをぼくだけに与えられるものだと思っていたい。あなたの美しさは、ぼくにしか分からないで。あなたのぬくもりは、ぼくだけが、知っていたらいい。
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