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腹側被蓋野
鈴音、吸う音、弾、硝子玉、魚の鱗、燐光、
屋台に吊り下げられた脳の一領域はピカピカと光っている。
指さした、君はそれを見て、ぼくを見て。小銭の音がして、銃を持った、
瞬く間に撃ち落された。穴があいたそれを、ぼくの一部を。要らない、君の一部までおまけで貰った。
手にいれたい、金魚に食われてしまう前に。
捕まえたい、人混みに紛れてしまう前に。
袖を触れ合わせて、君のえくぼが見たい。
星に祈るには早すぎるね、と君が言って。
白昼夢で良い、
あつさに魘される夜で良い、
あつさに項垂れる君を見たくない。
君の手を引けるぼくで在りたいのに、君の背中を見ていたい。
なにも誤魔化したくはないんだ君の前では無意味だ言葉は無意味だ昔の君を見ている瞼の奥にしか存在しない君を見ている振り返ってばかりいる笑わせないでよ風鈴を揺らす前に教会に行くべきだぼくを見て君を見ていないぼくを見て。無意味だ、昔の君を重ねている。
残像と踊ってよろめいたまま、儚い火花を手にしよう、踊って?ぼくを見て。
きみじゃない、キミでもない。君だ。君だけがぼくの夏だ。君だけが。
過去の君だ、昔の君だ、ぼくの夏、ぼくの星、近くに来ないで、遠くの空で輝いていて。今の君では足りないから、足りないんだ、残像を壊さないで。
何も埋められない、棺の中に花を手向けられるのは君じゃない分かるだろ?愛していると言ったよね、何もかもが足りないんだ、魚達の棺を作った時、僕は君の花に埋もれていた、今は無理だ、無意味だ、全てが比喩だ、全てが虚構だ、何もかもが違うんだ、ネジが外れて壊れていく掌から零れ落ちて砂だけが残る、知らない事ばかり、何と言ったらいい?足りない言葉ばかり。
インクを飲んで死にたい、綺麗な液体だ。
夜の光に守られて死にたい、綺麗な星屑だ。
分かり合えない、分かっている。
わかりあえない、あえない。
あえない。
君の背中に守られたかった。
祭囃子に手を繋いで、君の汗をぼくに移してほしかった。
夏だ、
夏は残像でまやかしだから。中脳の奥が騒いで灼ける、細いプラスチックのスプーンで氷を掬う、喉の奥に通っていく。下駄が足元で鳴って、冷えた君の手を引いた、
夏だ。
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