第1章 怪しげな依頼

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*** 「どうぞ」  30分ほどしてやってきた男を目にしたとたん、OKしたことを後悔した。 (やっぱ、とんでもなく危ない仕事じゃないの、これって)  にこりともせず、黒の高級国産車の後部ドアのそばに立っていたのは、真っ黒な髪を七三分けのオールバックにした長身の男性。  すっとナイフを入れたような切れ長の目はするどく、鼻筋が通り、唇も薄い。  はっきり言って、昔のヤクザ映画とかVシネマなんかに出てきそうなご面相。  酒井さーん。マジで反社会勢力とかじゃないよねー。  不安を覚えたわたしは、車の扉に手をかけたまま、未練がましく事務所のほうに顔を向けた。  酒井さんは、窓から顔をのぞかせて、例のニコニコ顔で手を振っている。  もう、せめて面接ぐらい一緒に来てくれればいいのに。  後で文句言ってやらなきゃ。  
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