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車が発進してから、おそるおそる声をかけてみた。
「あの……あなたがご依頼主ですか?」
男は前を向いたまま、バックミラーごしにわたしに視線を向けた。
「いえ、違います。わたしは依頼した人物の秘書をしている者で、湊と申します」
「なんでわたしなんかに話が来たのかしら?」
「さあ。私はただお迎えに上がるようにと命じられただけですので」
そっけなくそう言うと、もう話は終わりというように目線をそらした。
もうー、やっぱ怖いよー。
今からでも、ドア開けて飛び降りようかな。
でも、こんな往来の激しい場所じゃ、後続車に轢かれるのがオチだろう。
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