第2章 麗しき副社長

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 わたしはもう一度、コーヒーを口にした。  なんだか、やたらと喉が乾く。 「もう少し詳しい事情をお話したいのですが……よろしければ、これから自宅のほうまでご足労願えますか。ちょっとここでは話しづらいので」 「はい、もちろん構いませんけど」  いや、そりゃ行きますって。  ここで詳細を聞かずに帰ったら、楽しみに観てきた連続ドラマの最終回だけを見逃すようなものだし。  ただ、心のなかでは、いくらなんでも無理な話だと思っていた。  この人とわたしでは、あまりにも住む世界が違いすぎる。  彼とわたしはまさしく月とスッポン。  そんな人と、いくら〝フリ〟とはいえ恋人なんて。  無理無理。  ぜったい無理。  大金のギャラをあてにしていた酒井さんの落胆した顔が目に浮かぶけど……  いや、どう考えても無茶な話でしょう、これは。  
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