第2章 麗しき副社長

5/26
前へ
/198ページ
次へ
 芹澤さんはデスクに戻り、内線をかけた。 「これから、自宅に戻る。そのあと、直接、空港に行くから、車の用意をしておいてくれ」  受話器を置き、デスクの上のラップトップをビジネスバッグにしまうと、 「じゃあ、行きましょうか」とにっこり微笑んだ。   ***  芹澤さんはもちろん、ビレッジ内の超高級レジデンスの住人だ。  オフィス棟からレジデンス棟までは、渡り廊下でつながっていた。 「最初から自宅に来てもらえば良かったんだけど、初対面の女性をいきなり部屋に呼びつけるのは失礼だと思ったもので」 「そうですか。お気遣いありがとうございます」  金で雇おうとしている人間にも気遣ってくれるんだ。  さすが、生まれながらのセレブリティ。  むやみにいばり散らす成金とは違う。 「会社だと、耳に入れたくない人に話が伝わってしまうことがあるんですよ。その点、自宅は安心なので」
/198ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1209人が本棚に入れています
本棚に追加