第2章 麗しき副社長

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 彼は天井に目を向けた。 「今日みたいな晴れた日もいいけど、雨の日もなかなか楽しいですよ。ガラスに水滴が流れおちて、まるで水族館の魚になったような気分になれて」 「うわー、それも素敵でしょうね」  その話を聞きながら、わたしは意外に思っていた。  通路を歩きながら天候の違いを楽しむなんて、この人、ずいぶん繊細な一面もあるんだ、と。  大企業の副社長と自分の間に共通点なんて、まったくないだろうと思っていたけれど、ほんの少しだけ距離が縮まったような気がして、実はちょっと嬉しかったりした。   ***  レジデンス棟は6階建。  でも、表示を見ると、建物の大きさの割には戸数が少ない。  つまり、1部屋1部屋の面積が広いってことだ。  そういえば、テレビで紹介していたとき、分譲価格は最低でも5億円と言っていた気が……
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