第2章 麗しき副社長

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 何度も言うけど、住む世界が違いすぎる。  少し距離が縮まったなんて、思い違いもいいとこだった。  そのリビングはとてつもなく広く、わたしのアパートの部屋だったら10室ぐらいは入りそう。  天然大理石の床材を使ったテラスと一続きになっていて、全開放式の窓を開け放てば、さらにスペースが広がる。  ちょっとしたパーティーなら、ここで充分開けそう。  大型の家具はすべて作り付けで、ミニシアターのスクリーンほどありそうな大型テレビの正面には、ゆったりしたうす茶色の革張りのソファーが置かれている。 「どうぞ、そちらにかけてください」  副社長室で坐ったソファーのように極上の坐り心地だ。  だけど……  こうした部屋にはありがちだけど、ここには生活感というものがまるで感じられない。  芹澤さん、忙しそうだから、家には寝に帰るだけなんだろうな。  わーっ、もったいなさすぎる。  こんな、ゴージャスで最高に居心地の良さそうな部屋が、宝の持ち腐れだなんて。
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