第2章 麗しき副社長

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「何か、飲む? でも酒以外はミネラル・ウォーターしかないけど」  脱いだ上着をソファーの背にかけ、ネクタイの結び目を少し緩めながら、彼は言った。  うわ。その着崩した感じ。  魅力的すぎて、目の毒。  すっかり見惚れていることに気づかれないよう、普通の声を出そうと努めた。 「あっ、じゃあ、お水をいただけますか」  声、若干、裏返ってしまった気がするけど。 「了解」  わたしの声なんか、まったく気に留めた様子もなく、芹澤さんはリビングに置かれた小型冷蔵庫からミネラルウォーターのペットボトルを出し、グラスについでくれた。 「実はこれから夜の便で上海に出張なんだ。とにかく今回の依頼のこと、手短に説明させてもらうよ」 「はい。ぜひお願いします。もう、さっきから頭のなかが〝はてなマーク〟でいっぱいで、今にも爆発しそうなんで」
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