1211人が本棚に入れています
本棚に追加
「何か、飲む? でも酒以外はミネラル・ウォーターしかないけど」
脱いだ上着をソファーの背にかけ、ネクタイの結び目を少し緩めながら、彼は言った。
うわ。その着崩した感じ。
魅力的すぎて、目の毒。
すっかり見惚れていることに気づかれないよう、普通の声を出そうと努めた。
「あっ、じゃあ、お水をいただけますか」
声、若干、裏返ってしまった気がするけど。
「了解」
わたしの声なんか、まったく気に留めた様子もなく、芹澤さんはリビングに置かれた小型冷蔵庫からミネラルウォーターのペットボトルを出し、グラスについでくれた。
「実はこれから夜の便で上海に出張なんだ。とにかく今回の依頼のこと、手短に説明させてもらうよ」
「はい。ぜひお願いします。もう、さっきから頭のなかが〝はてなマーク〟でいっぱいで、今にも爆発しそうなんで」
最初のコメントを投稿しよう!