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彼はそこで一旦話を切って、じっとわたしの顔を見つめた。
至近距離で見つめられると、二重まぶたや鼻筋のラインの造形の美しさに目を奪われる。
この美貌、いくら見続けても見飽きることがない。
「今までのところは理解してもらえたかな?」
と、急に話をふられて、慌てて目を逸らした。
「はい。でも、それとわたしの役割はどういう関係にあるんでしょうか」
芹澤さんはミネラルウォーターを1口飲み、話を続けた。
「今から2カ月先の5月25日にうちのグループの創業記念パーティーがある。その席できみにぼくの恋人役を演じてもらいたいんだ。彼女との結婚話が公になる前に、きみをぼくの婚約者だと発表するんだよ。縁談をぶち壊すために」
「えっ?」
マジですか?
マジで言ってます?
「む、無理ですよ、そんなの。失礼ですけど本気でおっしゃってます? そんな大役、わたしに務まる訳ないです」
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