第1章 怪しげな依頼

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 それで、もしかして天職じゃないか、と勘違いしてしまい、高校卒業後、この事務所に所属。以来、芽が出ないまま、早7年。もう今年、26歳になる。  最初の2、3年は、オーディションに明け暮れる毎日を送っていたけど、不合格続き。  いつしかその気力も萎え、今では、シーズン毎に定期的に依頼される通販ショップのカタログ・モデルと、雑誌の仕事がちらほらあるだけ。  映像の仕事もあるにはあるけど、エキストラに毛が生えたような役しかこない。  かろうじてエンドロールに名前は出るけど。  ここ数年は、バイトのほうが本業と化しているという情けない状態だった。  まあ、この世界は厳しいので、あっちでキャピキャピしてる彼女たちもバイト兼業。  接待を伴う接客業に勤しんでいる。  わたしも人のことは言えない。  バイトが夜の商売なのは同じ。  近所の飲み屋で働いている。  
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