第1章 怪しげな依頼

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 なかば呆れてため息をつく。  酒井さんは頭をかきながら、 「先方がどうしても来栖ちゃんをって、ご指名なのよ」 「本当にわたしですか? 栗田まみじゃなくて?」 栗田まみはこの事務所の稼ぎ頭のグラドル。 「いや、まみを2カ月も押さえられちゃったら、事務所、完全に干上がるし。それにほら、きみの名前書いてあるでしょ。ここに。ちゃんと」  酒井さんは封筒から書類を出した。  本当だ。来栖エリカ。間違いない。  えっ、それに何、このギャラ。  「金10,000,000.也」って?  これ、間違ってない?    1桁、いや、2桁ゼロが多いと思うけど。 「こんなに?」 「うん。今回は特別6:4にするよ。3年分ぐらいになるんじゃないの? いつものギャラの」  2カ月で……400万!  完全に年収超え。  なるほど。酒井さんがこんなわけのわからない仕事を受けた理由が、これでわかった。
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