第1章 怪しげな依頼

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第1章 怪しげな依頼

 四谷の雑居ビルの階段を登りはじめたとたん、若い女の子の甲高い笑い声が聞こえてきた。  3階まであがり、〈酒井芸能プロダクション〉と表札が掲げられているドアを開ける。  事務所では、さっきの声の主であるふたりの若手タレント、リサと絢奈が、来客用ソファーを陣取り、雑誌をめくりながら、雑談にふけっていた。 「あっ、サニーヒルズ・ビレッジじゃん。ホテルがオープンしたって、こないだワイドショーでやってたよ。わっ、スイートルーム、めっちゃ豪華! こんなところに彼氏とお泊まりしたい!」 「無理だって。大統領とか王様が泊まる部屋でしょ、これって。わ、このショップのラインナップもすごいね。ラグジュアリー・ブランドしか入ってないじゃない。下々の者は“ガン無視”かあ。富裕層の彼氏でも捕まえない限り、足も踏み入れらんないね」
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