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「着きましたよ、リシェット様。目をお開けください」
どのぐらい運ばれたのかわからなくなった頃、ブラウンがようやく立ち止まった。そっと目を開けると、いつの間にか森を抜けていて、道脇に馬車が置いてあった。
「急ぎましょう。そろそろ、城にも気づかれる頃でしょうから」
ブラウンはわたしを降ろすと、客車のドアを開けた。
「待って、捕まったらあなたは処罰されるかも知れないのよ」
「ご心配には及びません。この先に頼れる方がおりますので」
「……頼れる方? 誰なの?」
ブラウンはそれ以上は何も語らず、わたしに客車に乗るように促した。
* * *
どのぐらい眠っていたのだろう。うたた寝をしているうちに、すっかり外は闇夜になっていた。幸い今日は満月で、月明かりとランプの灯りで馬車を走らせることは出来そうだ。
少し走ったところで、ブラウンは馬車を停めて客車のドアを開けた。
「リシェット様、到着しました」
ブラウンに手を引かれて馬車を降りる。そこには煙突の付いた小さな小屋があって、窓から暖かい明かりが漏れていた。
「誰の家?」
「わたしたちの協力者が住んでいます」
ブラウンが扉をノックすると、中から女性の声がして、扉が開いた。
「お待ちしていました。どうぞ中へ」
顔を出したのは、フリルのついた黒いドレスを着た、金髪の女性だった。
「失礼します。さあ、王女も」
ブラウンに続いて家の中に入ると、正面の暖炉に目に止まる。その前にロッキングチェアが置いてあって、黒猫が丸くなって寝ていた。
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